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反復説って覚えてる? ~猫も鳥も魚も、脊椎動物が同じように胚発生する理由が少し解明された話~

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 こんにちは!

カメウサです!

 

突然ですが、「反復説」を覚えていますか?

反復説とは、「個体発生は系統発生を繰り返す」と言われる学説のことです。

個体発生は、ある生物一匹の生まれるまでの過程のこと。系統発生は、その生物種になるまでにたどってきた進化の過程のこと。くらいに考えていればいいと思います。

高校で生物を必修した方は、「魚っぽい形からサンショウウオっぽくなって、鳥みたいな感じから哺乳類になった」絵を覚えてるかもしませんね。(一番上のキャッチ画像のことですけど)

 

そんな反復説ですが、「どうしてそうなるの?」と考えたことがある人はいますか?

僕は最初に反復説を知ったとき、「へー、そうなんだー」程度にしか考えていませんでした。今、改めて考えると遺伝子の発現様式により形態がある方向に誘導されるから、であることは何となく理解できます。

 

さて、ここからが本題です!

実は脊椎動物は5億年もの期間、基本的な体の作りが進化してきませんでした。(個人的にはまずここでビックリです!)

その理由として、「遺伝子の使い回しによる制約」による可能が高いことが分かった、という研究を紹介致します!

 

 進化から見た脊椎動物

脊椎動物が進化的にはどのあたりから発生したのか、系統樹から見てみましょう!

約40憶年前に生まれた全生物の共通祖先(LUCA:Last Universal Common Ancester)は、その後進化を繰り返して、以下の3つのドメインに分かれていきます。

1.真正細菌

2.古細菌

3.真核生物

1.の真正細菌はいわゆるバクテリアのことで、大腸菌や納豆菌などが当てはまります。2.の古細菌には極限環境微生物のことで、メタン菌や好熱菌などです。「細菌」とは名は付くものの真正細菌は全く別の進化を辿ってきたと考えられています。そして、3.の真核生物がご存知の通り、脊椎動物を含む仲間になります。下に系統樹を示します。

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 真核生物は、さらに原生動物界・植物界・菌界・動物界へと分かれます。

菌界には、キノコ・カビ・水虫などの真菌や酵母などが含まれます。 原生動物にはミドリムシ・夜光虫や粘菌が含まれます。ちなみに粘菌の仲間はこんなのです。拡大すると「風の谷のナウシカ」の腐海のようですね!

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さらに動物界は発生の仕方で、二胚様性か三胚様性か、新口か旧口かで大きく分かれていきます。そして、脊索(せきさく:体の中軸支持器官)を発生中を含めてもつものが脊索動物と言われ、脊索動物の中でさらに原索動物と脊椎動物に分類されます。(意外と狭い範囲なのね…)

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ちなみ体腔とは、「内臓が入る空間」くらいに考えておくといいと思います。正確な意味ではありません。絵付きでまとめられた方がいらっしゃいました。見やすいですね!

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http://sadomarine.web.fc2.com/index.html

 

 脊椎動物の進化と形態保存のひみつ

以下、Nature Ecology&Evolutionに掲載されたArticle「Constrained vertebrate evolution by pleiotropic genes」

www.nature.com

および、理化学研究所東京大学プレスリリースより内容をまとめております。正確な内容を知りたい方は原著をご確認下さい。

脊椎動物の基本構造が5億年以上変わらなかった理由 - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部


 脊椎動物の基本構造(体の作り)は、脊椎・目・耳・咽頭・背側神経・心臓・肝臓・脊索・胃・生殖腺・腎臓・肛門・尾部などで、これらの関係は5憶年もの歳月を過ぎても維持されたままであったようです。

その維持の秘密を解く鍵は、体の形を決める発生過程にあると考えられていました。そして発生の初期ではなく、むしろ胚発生の段階の方が多様性が少ない(保存された)状態にあることが明らかになってきました。これを「発生砂時計モデル」と呼ぶそうです。

なんだか意外ですよね。普通に考えたら、卵の状態が一番同じような感じなのに、実はちょっと育ってからの方が似てしまうなんて。

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 脊椎動物の体に作りの秘密は、砂時計モデルの一番くびれた(多様性が低い)部分を詳細に調べれば分かるのではないか?

そこで、東京大学大学院理学系研究科の入江直樹准教授らは、脊椎動物6種と原索動物2種について発生過程の初期から後期にかけての遺伝子発現(RNA量)を解析し、生物種間での比較を行いました。

その結果、多様性が低い発生過程(砂時計のくびれ部分)では予想通り、脊椎動物間でずっと保存されていたことが分かりました。また、そこで働いている遺伝子は脊椎動物でより保存されていて、原索動物と区別ができることも分かりました。

 

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 また、くびれの時期に働いている遺伝子は種類が少なく、他の時期でも使われている「使いまわし遺伝子」であることが分かりました。重要な臓器が複数作られるにも関わらず、使われている遺伝子数が少ないのも不思議な話ですね。

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 さらに詳細に解析した結果、使い回し遺伝子の比率が高い発生期ほど進化的に多様性に乏しくなる(もっともくびれている状態になる)ことが分かりました。また、使い回しの頻度が多い遺伝子ほど生存に必須であり、他の多くの遺伝子と相互作用し、複雑な制御を多く受けていることなども明らかとなりました。

「使いまわし遺伝子」は「働き者遺伝子」でもあるようです。そして重要であるからこそ、簡単に他の遺伝子に役割を替えてもらったり、無くなることはできなかったようですね。

遺伝子の使いまわしは、多様化を広げる方向に働くことは既に研究されているようです。例えば、カブトムシの脚と角は、同じ遺伝子群が使われることによって形成されるのだとか!

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面白い研究も見つけたので、ぜひ覗いてみて下さい。

http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20130423_agr.pdf

 名古屋大学大学院 生命農学研究科)

 

遺伝子を使いまわすことで、多様性が獲得できるかもしれない。しかしながら、重要な場所で「制約」が生まれて、それ以上進化できなくなる。(それはつまり、異常時に対応できず絶滅の可能性が増すことを意味します。)

遺伝子の使いまわしは、「制約」と「応用」の諸刃の剣であったのです。

 

”使い回し遺伝子が多様化を制約する詳しい仕組みは複数考えられ、今後さらなる研究が期待される”東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室とのことです。仕組みを紐解くことによって、進化の秘密がさらに理解されるでしょう。もしかしたら、未来の生物の予想も可能になるかもしれませんね。

 

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

それではまた!