FXで長期運用~カナダドル/円でのリスク管理設定を統計的に求めました~
カナダは石油・天然ガス・鉱物資源と森林資源に恵まれた資源国です。アメリカ経済の影響を大きく受ける傾向にありますが、金融システムは安定しており、世界でも最上位の格付けを得ています。
トラリピを運営するマネースクエアジャパン(M2J)では、カナダドルを優遇しています。今回は30万円からカナダドル/円で長期運用するときの設定について、リスク管理の面から考えてみました。
カナダドルの推移
カナダドルの値動きはどの程度なのでしょうか?
1995年からのカナダドル/円の最高値と最安値をそれぞれ赤線と青線で示します。
また、2010年以降の最高値の平均、最安値の平均、(最高値平均+最安値平均)/2⇒平均として点線で表します。
図1.カナダドルの推移と2010年以降の平均
なお、2000年以降、2010年以降、2015年以降のそれぞれについて最高値・最安値も算出しましたが、差はほとんどありませんでした(下表)。
表1.カナダドルの平均
カナダドルの平均はおよそ87円で変動が少ないことが分かりました。また、最高値は95円、最安値は80円あたりになるようです。
よって、80-95円のレンジにトラリピを仕掛ければ、それなりの確率で収益が得られそうです。
統計的推論によるリスク管理
このまま「80ー95円に設定します。」でも良いとは思いますが、FXはハイリスクな金融商品です。リスク管理をさらによく考えたいと思います。
以下、考察
表1.に示す通り、カナダドルの平均は87円で安定しています。また、高値・安値の平均も安定していることから、今後も両国の国力に大きな変化が生じない限り、87円を平均としたレンジが続くと仮定して悪くないはずです。
2000年以降の状態が正常であるとした場合、2009年のリーマンショック時の変動がリスク管理のキーポイントになります。
リーマンショックは100年に一度の経済危機、と言われることがあります。今回はリーマンショックレベルが100年に1度起こると仮定して、リスク許容範囲を求めてみました。仮定条件は以下に示します。なかなか厳しめの設定です。
仮定条件の1,2より、カナダドルの分布を描くことができます。
また条件3,4は、人生100年時代と言われる世の中で、金銭的に悩まず生きていくために必要な仮定条件だと考えられます。
それではこれらの数値を元に計算していきます。まず、リーマンショックレベルの円高(68.31円)は下位1%の水準であるとします。ここで標準正規分布表を用いてみると、z=2.33で中心から49%離れた数値になることが分かります。
よって、カナダドルは87.58円を中心とした、標準偏差 8.27円の正規分布になります。
*標準偏差 σ=(87.58-68.31)/2.33
図2.カナダドルの分布(推定)
また、 カナダドルがいくらのとき、分布のどこに位置するのかを表2.にまとめました。
表2. カナダドルの分布位置
以上の結果を用いて、100年に一度(上位99.0%)と1000年に一度(上位99.9%)の経済危機時のカナダドル/円をチャートに引いてみます。
図3.カナダドルチャートと経済危機時の推定値
2000年以降で見た場合、悪くない仮定条件に見えますね!
最後に、80年間FXで運用した場合に、どのレベルの経済危機に遭遇したらロスカットされるのか試算します。
条件は100年,200年,1000年,2000年に一度遭遇する確立(1%,0.5%,0.01%,0.005%)です。カナダドルの推定分布から試算すると、どの程度までカバーしていればロスカットにならないのでしょうか?
グラフは、{1-(カバー範囲)^(投資年数)}をロスカット遭遇率として作成しました。
図4. FX投資年数とロスカット遭遇率
結果は99.95%までカバーしていれば80年運用した場合でも5%未満のロスカット遭遇率となります。つまり、カナダドル/円が60円になってもロスカットしないように設定すれば十分安全である、と言えます。
まとめ
カナダドルでFXを行う場合、60円までロスカットレートを引き下げれば十分安全であることが分かりました。
ただし、この条件は2000-2018年と同等の経済水準を仮定しています。経済、国力は常に変化していますから、定期的に見直しが必要です。特に日本は人口が減少しますから、国力の低下は逃れられません。
為替は国力の均衡位置を表す指標である、と僕は考えます。FXを通じてマクロ経済を理解できれば、資産形成、リスク管理能力が高まります。
資産形成と経済知識の向上が同時にできれば、ベストですね!
僕もFXを通じて、マクロ経済を理解できるよう学んでいこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた!
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